こんにちは、ママ薬剤師M子です。今回は、M子に相談のあった虫刺されの症状と処方例について1例ですが、解説していきます。


男の子(8歳)の虫刺されの症状と処方例について
今回紹介する事例は、M子のママ友達から、お子さんが病院を受診した後に、念のためということで処方せんを見せてもらいました。

虫刺されと言われて、こんなに薬がでたんだけどいるのかな?
虫刺されの症状発生から病院受診までの経緯
- 子どもあるあるですが、虫か何かを追いかけて、草が生い茂る中に入り込み遊んでいた。しばらくして、体中に赤い腫れが、顔、腕、手へと複数広がり、痒みで掻きむしったところが一部化膿していた。
- 病院を受診し、虫刺されと診断。ストロンゲストのステロイドを含む複数のお薬が処方された。
- ママ友達自身は虫刺されで一度に多種類のお薬を使用した経験がなかったため不安になり、子供に使っても問題ないか相談があった。
- 使用した患部の写真について、了承を得て掲載。

実際の虫刺されの処方箋
では、実際のこのお子さんの処方例を確認してみたいと思います。
カテゴリ | お薬名 |
---|---|
(Strongest)ステロイド | クロベタゾールプロピオン酸エステル(デルモベート)クリーム0.05% |
(Strong)ステロイド+保湿剤 | ベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩(リンデロンVG)軟膏0.12%15g+ヘパリン類似物質(ヒルドイド)クリーム0.3% |
(Medium)ステロイド | アルクロメタゾンプロピオン酸エステル(アルメタ)軟膏0.1% |
保湿剤 | ヘパリン類似物質(ヒルドイド)ローション0.3% |
抗生物質 | セフカペンピボキシル(フロモックス)100mg |
抗ヒスタミン薬 | レボセチリジン(ザイザル)2.5mg |
虫刺されの処方せんに対してのM子の見解
- まずは、急性に症状が悪化していたため、最強クラスのデルモベートが処方された。
- 全身に症状が広がっているため、抗生剤と抗ヒスタミン薬の内服、一部化膿しているための抗生剤入りステロイド外用薬のリンデロンVGが処方された。
- 写真は手だけですが、顔にも症状があったため顔にも塗布できるクラスのアルメタが処方された。
- 肌のうるおいを保つことでバリア機能を助け、回復を助ける役割をもつヒルドイドも処方されていた。
今回のような場合は、市販薬では追いつかない状態だった考えています。また、写真はプライバシーの関係で撮影できませんでしたが、お子さんは痒みや痛みで終始涙顔、大変辛そうな表情でした。
受診されるべき時に受診し、適切な治療が行え、親御さんの迅速な受診判断が結果的に奏功し、症状は日に日によくなり、最強クラスのデルモベートは早めに卒業できたようです。

この見解は医師の処方例を解説したもので、良いか悪いかを判断するものではないです。実際の判断は、診察した医師の判断にゆだねられます。また、親御さんの早めの判断で、この日は日曜日でしたが、休日診療の病院を探し遠くまで受診されていました。
虫刺されというほぼ間違いない原因により急性に症状が強く出た場合、炎症をいち早く抑えるために強いクラスのステロイドを一時的に使用することがあります。今回はその一例だったのではないかと思われます。さらに、症状が全身性に出ていたため、抗生剤や抗ヒスタミン薬などの内服の処方もあり、虫刺されに対するフルセットの処方で、お薬の種類は多いものの、すべての必要性を網羅した処方だと考えられたためご紹介しました。
病院で処方されるお薬は、お子さんの症状に合わせて適切に選ばれています。
病院でお薬を処方してもらえることの利点は、医師に早急かつ直接的に症状を診てもらい、治療ができること、必要なお薬の種類や量を、医師が厳密に処方できるということだと思います。
例えば、虫刺されの場合で蜂などの針を持つ虫の場合は、腫れやジュクジュク以外に蜂の針が体に残ったりすることもあり、外科的とまでは言いませんが物理的な処置が必要なケースもあります。
市販薬は、有効成分以外の成分が多種類含まれていることが多いので、そこが市販薬の良いところでもありますが、中の成分の種類や量、割合などはいじることができません。また、万が一薬が合わなかった場合、どの成分に対して合わなかったのかを判断するのもむずかしいです。
医師の場合は、適切な範囲で、その濃度や分量を調整し、各々患者さんにあった処方が可能です。
痒み、痛み、腫れがひどい場合や、肌が敏感でかぶれやすい人は、まずは医師の処方を仰ぐのが一番だと思い。ひとつ注意していただきたいこととしては、強いステロイドは怖いからといって、処方されたにもかかわらず実は使っていなくて治りがわるい・・という方もおられます。残念ながら、治療開始からしばらく期間が経った後に薬局でのお話の中で気づくことが多いです。使用方法の他にも、心配なこと、気になることがあれば、遠慮せずに医師や薬剤師に相談して不安をなくしてくださいね。
まとめ:子どものひどい虫刺され、迷わず病院へ!
今回のポイントを簡単に振り返ってみましょう。
- 症状がひどい・全身に広がっている場合
- 飲み薬(抗ヒスタミン薬・抗生物質)で体の中からもアプローチ!
- かきむしって化膿(かのう)している場合
- ばい菌をやっつける抗生物質入りの塗り薬が必要!
- 腫れ・赤み・かゆみが強く、虫刺されなど原因がはっきりしている場合
- 症状をしっかり抑えるために、一時的に強いステロイドを使うことがある!
- 顔などデリケートな部分がある場合
- 体に使うお薬とは別に、顔用のやさしいステロイドを使い分ける!
市販薬で様子を見るか、病院に行くか…迷った時の判断基準の例を紹介
あくまで例になりますが、市販薬で様子を見るか、虫刺されだけど病院で受診して処方をお願いするかの判断基準は主に以下が挙げられます。
次回予告:夏の定番「キンカン」と「ムヒ」どう違う?
さて、ここまで3回にわたって病院で処方されるお薬について少し専門的なお話をしましたが、次回はより身近な市販薬について解説したいと思います。
M子のアラフォー世代には虫刺され薬の定番といえば『キンカン』と『ムヒ』でした。
『どちらも昔からあるけれど、何が違うの?』『子どもにはどちらが良いの?』といった疑問に、ママ薬剤師の目線で詳しくお答えしていきます。
ぜひ、次回の記事もチェックしてみてくださいね。
誰かのお役に立ちますように
ママ薬剤師M子
参考文献
- 日本皮膚科学会ガイドライン 痒疹診療ガイドライン2020: https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/130/7/130_1607/_article/-char/ja/



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