前回、前々回と3回に渡って「ムコダイン」と「ムコソルバン」の違いについて記載してきたシリーズ(?)も今回が最終回です。(続きが無ければ・・)
今回は、私も経験した妊娠、授乳時に関するムコダインとムコソルバンの違いについてです。
添付文書(お薬の説明書)の記載について
「添付文書」というお薬の説明書にいろいろな注意点が書いてあります。その中でも、必ずと言っていいほど、「妊婦、産婦、授乳婦等への投与」についての記載があるので、その点をピックアップしていきたいと思います。
まずは、ムコソルバンは以下の通りです。
1. 妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
PMDA-添付文書検索「ムコソルバン錠15㎎」
[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
2. 授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。[動物実験(ラット)で母乳中へ移行することが報告されている。]
次にムコダインは、以下の通りです。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないことが望ましい。
PMDA-添付文書検索「ムコダイン」
[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
これらから、「ムコソルバン」は、母乳中への移行が報告されていることから、服用時は授乳を避けさせること、となっています。また、「ムコダイン」は上記のように、妊婦に推奨されていません。
しかし、どうしても鼻水などの症状が辛いときには我慢するしかないのでしょうか?もう少し調べてみました。
妊婦に関しての参考文献
参考文献1の妊娠中の記載を見ると、
●ムコダインは「妊娠中の使用に関する情報はほとんどないが、古くから広く使われていて、現在のところ妊娠中の使用による有害事象の報告がないことを踏まえると、妊娠には影響しない可能性が高い」という記載があります。
●一方で、ムコソルバンは、「妊娠中の使用に関する方法はほとんどない」という記載のみです。
これらのことから、使用経験が豊富で有害事象の報告もないムコダインの方が、安心して選択できるのではないかと思われます。
薬剤師として働いていても、妊婦さんに処方される去痰薬は、ムコダインが圧倒的に多いです。
授乳に関しての参考文献
また、同じくムコダイン・ムコソルバンの両方について別の参考文献2によると、
「授乳婦服用による有害事象の報告が見当たらない。小児に適応を持ち、移行したとしても問題にならないと思われる。」
という理由から、授乳時にも使用されることがあるようです。
ただし、その時の状態、治療の有益性などをふまえて医師が判断しますので、受診するときに妊娠、授乳していることを必ず伝え、医師の指示に従うようにしましょう。
まとめ
ムコダインとムコソルバンは併せて使うと、より効果を期待できるため、症状が辛い場合には併用する方法もあります。
たまに、同じ薬と混同して、病院でどちらか一方のみしか処方できない病院もあるのが現実だったりしますが。
夫が耳鼻科で、ムコソルバンを処方してもらおうと思ったら「うちには、そんな薬はおいてありません」と言われてしまったそうです(院外処方の病院)。昔からムコソルバンを出さない処方を推奨されている医師の方もいるので、その医師の方の指示に従ってください。
ムコダインは「心疾患を持った方に慎重に投与しなければならない」、子供には、クラリスロマイシンを飲むときは、ムコダインの剤形によって苦みが増すので要注意。ムコソルバンは用量が違う薬があるので、1日1回か3回かを間違えずに。
など、注意する点は何点かありますが、副作用の発現頻度自体は、他のお薬と比べて低く、安全性が高いと言われています。
風邪をこじらせて辛い方が、少しでも楽になりますように。最後までお読みいただきありがとうございました。
薬剤師M子
【参考文献等】
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