「ロキソニン」と「カロナール」って何が違うの?(妊娠授乳期)【薬剤師作成】

処方薬
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こんにちは。マミムメデイ薬剤師M子です。ロキソニンとカロナールの3部作(?!)最後は、妊娠授乳期です。

妊娠中に限って頭痛がひどくなる、授乳が始まると始まるで、乳首のトラブルによる痛み、乳腺症による発熱、とめどない育児による疲れからの免疫力低下、それに続く頻回の風邪による発熱。

これ全部、M子が妊娠~授乳期におけるよく発生した症状です。

解熱鎮痛薬があると助かる場面が多々ありましたが、妊娠期間中、授乳中と、その都度胎児や母体の状態が異なるので、お薬を使って大丈夫なのか不安になりました。

今、痛みや熱で困っている妊婦さんやママさんがいたら読んで頂いてひとつの情報にしてもらえたらと思い、妊娠中と授乳中での、ロキソニンとカロナールの使用の可否について調べた結果をご紹介したいと思います。

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添付文書と妊娠・授乳期の関係

薬剤師、医師が薬の情報を得るときにまず使用するのが添付文書という、処方薬に添付されている説明文書になります。こちらにも、妊娠中、授乳中の使用可否が記載されているのですが、とくに授乳に関しては、安全性を科学的に判断することなく、薬が母乳中に移行するかしないかで可否が記載されていたりします。

なので、難しい問題なのですが、日常診療で使用できると言われているようなお薬でも、添付文書上「使用できません。」と説明されてしまうこともあるのです。

もちろん、このような事実もふまえて適切に説明されている場合ももちろんあります。私が受付をするときに、妊娠している患者さんにいろいろな薬を飲んで良いか聞かれ、添付文書のみを参考にするには、情報が足りないと痛感したことがありました。なので、添付文書を主にして、それらにまつわる情報をお伝えしたいと思いました。(この記事は参考情報とし、医師(特に主治医)、薬剤師の判断を仰ぐのを忘れずに!)

M子
M子

解熱鎮痛剤ではないですが、ステロイドを常に服用しなければならない患者さんが妊娠したため、主治医ではない医療従事者から、ステロイドは妊娠中は飲まない方が良いと言われ自己中断され、緊急搬送されたことがありました。
入院直後から、ステロイドを再開し、妊娠も無事継続できたという症例があること記事を書きながら思い出したのですが、病状の増悪と妊娠中のリスクの天秤で、とてもヒヤッとさせられる経験をしたことがあります。

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解熱鎮痛剤は結局、妊娠・授乳時に使っていいの?

結論からいうと、

カロナールは、妊娠中全ての期間においてと、授乳中いずれも、疫学的な証拠が比較的豊富で、ほぼ安全に使用できると評価されています。(とはいいつつも、特に絶対(4~7週)/相対(8~16週)過敏期においては医師の指示を仰いだ方がよいと思います)

ロキソニンは、妊娠中の後期(28週以降)においては投与しないこと(禁忌)とされています。ただし、FDA措置では20週以降には投与しないほうがいいと記載されています。そのため、妊娠期間の絶対/相対過敏期とFDA措置を鑑みると、ロキソニンが妊娠中に服用できる時期の判断は難しそうです。
一方で、「授乳中」には、安全に使用できると評価されています。

何か注意する点があるかもと思い、さらに調べると以下の3項目が注意する必要があるようです。*1 *2 *3 *4 *5 *6

①カロナールと、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、自閉症スペクトラム症(ASD)との関連。

カロナールの成分であるアセトアミノフェンと、ADHD、ASDの発症リスクには強い関連があることが大規模な研究で示されています。*7

同様の結果は2016年にも発表されており、この研究によりサポートされています。アメリカの食品医薬品局(FDA)はこれを受けて、妊娠中の痛み止めは熟考の上使用するよう強く推奨しています。*8

したがって、安全に服用できるとはいえ、必要時にとどめ、漫然と服用するのは避けた方が安心ですね。(漫然の判断は、医師の方とご相談して決める必要がありますね)

②授乳は、お薬を服用してからしばらく経過してからがより安全。

カロナールは、服用後10~60分で、体の中(血液中)で最高の量となります。また、ロキソニンは、服用後30~50分で最高の量となります。母乳への移行は、血液中(正しくは血漿中)の濃度とよく相関するため、この時間帯を避けて服用すると、より胎児への移行が少なくなります。したがって、カロナールもロキソニンも、服用前に授乳するか(次の授乳まで間隔があくので)、服用してから1時間以内の授乳を避けることをお勧めします。

③FDA措置ではロキソニン(NSAIDs)は20週以降は処方すべきではないとの記載あり。

こちらは、FDAが2020年に発表したものでありますが、

医学文献のレビューや、NSAIDsの使用に関連して生じた羊水量の減少または胎児の腎障害に関してFDAに寄せられた症例報告に基づき、
「妊娠20週以降の女性へのNSAIDs処方により、胎児に腎障害が生じ、羊水量の減少を招く恐れがあるため、妊娠20-30週の間は同薬剤を処方するべきではない」と発表し、我が国の一部のNSAIDsの添付文書の改訂を指示しました。我が国の添付文書は、FDAに寄せられた報告の投与期間や症例の偏りなどのから検討を行い、妊娠期間の明示までには至っておりませんが、「必要最小限の使用とし、適宜羊水量を確認する」旨の注意喚起が追記されました。

さいごに

最近、スイッチOTCなどで、処方せん医薬品であった薬を、薬局やドラッグストア等でも個人で購入できるようになりました。

そこで心配なのが、一般名で成分が記載してあり、同じ成分だと気づかない方がいる可能性があること。また、総合感冒薬に至っては、成分の中に解熱鎮痛剤成分が入り込んでおり、気が付かないうちに内服している可能性があるということです。ですので、薬局やドラッグストアで薬を購入する際にも、妊娠中や授乳中であることを、薬剤師にぜひ相談してみてください。

また、「安全に使用できる。」と言われると安心はしますが、何事も、安心な面、怖い面ありますね。医療従事者と相談しながら、リスクベネフィットを考えながら薬が適切に使用でき、少しでも快適に妊娠、ママ期を過ごしてもらえると嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

薬剤師M子

参考/参照文献

  1. カロナール添付文書
  2. カロナールインタビューフォーム
  3. ロキソニン添付文書
  4. ロキソニンインタビューフォーム
  5. 薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳 改訂3版, p233
  6. 母乳とくすりハンドブック改訂3版,2017,pⅣ,p2, 6
  7. Association of Cord Plasma Biomarkers of in Utero Acetaminophen Exposure With Risk of Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder in Childhood. Yuelong Ji;Romuladus E.et al  JAMA Psychiatry.2020;77(2):180-189. doi:10.1001/jamapsychiatry.2019.3259
  8. https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/fda-drug-safety-communication-fda-has-reviewed-possible-risks-pain-medicine-use-during-pregnancy

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