ヒルドイドローションの添加物変更について調べてみました【ママ薬剤師M子】

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こんにちは、薬剤師M子です。以前ヒルドイドローション含めたヒルドイドについてお伝えしましたが、2024年7月(2024年9月出荷分)から一部添加物が変更になったので、せっかく記事を書いたばかりでしたのでついでに調べてみました。

※今回の変更は、先発のマルホ社製のヒルドイドローションの添加物変更についてです。

困ったM子
困ったM子

M子はどちらかというとアレルギー体質で、添加物にも敏感で、どんな添加物になったのか気になってしまいました。

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ヒルドイドローションの添加物について

ヒルドイドローションは、2001年に販売開始となっています。もう20年以上使われているんですね。

現在の製品は、過去遡って公開されている範囲で2016年2月に改訂された添付文書から同じ添加物の組成となっています。(約8年くらい同じ添加物の組成だったのですね)

では、変更前後の添加物の組成について確認してみたいと思います。
変更前後は、「ミリスチルアルコール、パラオキシ安息香酸メチルを追加し、還元ラノリン、パラオキシ安息香酸エチルを削除」となっているようです。1

添加剤(変更前添加剤(変更後
グリセリン、白色ワセリン、スクワラン、セタノール、還元ラノリン、セトマクロゴール1000、モノステアリン酸グリセリン、パラオキシ安息香酸エチルパラオキシ安息香酸プロピル、カルボキシビニルポリマー、ジイソプロパノールアミングリセリン、セタノール、ミリスチルアルコール、白色ワセリン、スクワラン、セトマクロゴール1000、モノステアリン酸グリセリン、パラオキシ安息香酸プロピルパラオキシ安息香酸メチル、ジイソプロパノールアミン、カルボキシビニルポリマー

出典:ヒルドイドローション0.3% 処方変更及び添付文書の改訂のご案内から一部表示変更(下線部については後述)

では、変更された添加物について詳しく見ていきたいと思います。

ヒルドイドローションの添加物変更①:パラオキシ安息香酸類の変更点について 

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変更前も変更後もパラオキシ安息香酸・・・という名前がついたものがありますが、よく見ると、語尾がエチルメチルと異なっています。これらは何れもパラベン(パラオキシ安息香酸類)と総称される、主に防腐剤として広く使用されている物質の一つです。 

ただし、同じパラベンとはいえ、それぞれの成分には効果の差等が報告されています。 

そこで、パラベンとしての性質やそれぞれの成分の違いについてまとめてみました。 

◇パラベン(パラオキシ安息香酸類)の特徴 

エチル、メチルに関係なく「パラオキシ安息香酸類」としての特徴を以下に書きます。が、飛ばしていただいても大丈夫です!

・化粧品、食品、医薬品などの防腐剤として幅広く使用される 
・微生物、特にカビや酵母に対して効果的 
・一般的に、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベンの4種類が使用される。アルキル基(アルカンから水素原子を1個除いてできる炭化水素基のこと)の炭素(C)の数が、メチルパラベン(1つ)、エチルパラベン(2つ)、プロピルパラベン(3つ)、ブチルパラベン(4つ)の順に多くなる構造をしています。 

・刺激の起こしやすさ、アレルギーの引き起こしやすさ、毒性などは低く、定められた濃度(日本では化粧品基準で定められている)で使用する分には安全性が高いと言われていますが、一方で、接触性皮膚炎を起こしやすい医薬品添加物の一つでもあります(とくに、バリア機能が低下した皮膚が長い時間接すると、より接触性皮膚炎をおこしやすくなってしまいます)。 

パラベンの4種類の特性について

先ほどパラベンには4種類あると書きました(読み飛ばした方は、そういうものだと思ってください)4種類のパラベンの中にも性格があります。 特徴を整理してみると以下があげられます。

■厚生労働省により食品に使用が認められているもの
 →エチルパラベン(変更後)、プロピルパラベン、ブチルパラベン
 ※メチルパラベン(変更前)は含まれていません

■防腐剤としての効果の高さの順番(左から右へ効果が低い)
 →(高)ブチルパラベン,プロピルパラベン,エチルパラベン(変更後),メチルパラベン(変更前)(低) 

変更前変更後の添加物には、変更された上記の2種類の他にも、プロピルパラベンがどちらにも添加されています。パラベンは、他の種類のパラベンまたは他の防腐剤と一緒に使用することで、お互いの効果が高まり合い、パラベンの組み合わせによる抗菌力の向上が見込めることで長期的に保存可能になることが検証されています。2今回の併用も、この理由のためと思われます。

また、パラベンは皮膚からも吸収されることがわかっています。できれば安全性がより高いものが良いですよね。

M子の意見
M子の意見

エチルパラベン(変更後)メチルパラベン(変更前)よりも防腐剤としての効果も優れている、また、食品添加物としてもエチルパラベン(変更後)は認められているということから、より外用薬の添加物として安心できる条件がそろっていると言えると思います。 3 4

ヒルドイドローションの添加物変更②:還元ラノリン(変更前)、ミリスチルアルコール(変更後)について 

次に、還元ラノリンミリスチルアルコールについてですが、

それぞれに関して日本医薬品添加物協会のデータがありましたので比較してみます。 5※本ページのリンクの閲覧には同意が必要なので、一部のみ引用しています。

◇還元ラノリン 

医薬品に使用される目的:
基剤(お薬のベースとなる部分で、お薬の成分を皮膚にうまく届ける役割をする役割のもの)、乳化剤 

還元ラノリンについては、メリットも多いですが、以下記載があるように一部デメリットもあります。

ヒトにおける試験で、還元ラノリンにより接触性皮膚炎が報告されており、アレルゲンとしては、ラノリンアルコール類、酸化されやすい低分子物質、還元工程における痕跡量のニッケル、銅、クロムの混入が考えられるという報告がある。

引用:日本医薬品添加剤協会(還元ラノリンの項)

◇ミリスチルアルコール 

医薬品に使用される目的:
基剤、コーティング剤(表面に薄い膜を作る成分です。この膜は、お薬の効果を長持ちさせたり、皮膚を守ったりする役割があります。)、乳化剤 

ヒトにおける試験で、0.8%、0.25%、0.1%のミリスチルアルコールを含有するモイスチャーローションの塗布試験において、累積皮膚刺激性や皮膚感作性(※)は認められなかったという報告があります。
引用:日本医薬品添加剤協会(ミリスチルアルコールの項を一部M子要約)

皮膚感作性とは、「皮膚への接触によりアレルギーを誘発する性質。一度感作されると、ごく微量でもアレルギーを起こし局所的なアレルギー反応である接触性皮膚炎につながってしまう。」、ものをいいます。 

 これらの情報からM子として言えることは、還元ラノリンよりもミリスチルアルコールの方が、接触性皮膚炎を引き起こす頻度は少ない可能性が考えられると思います。 

M子の記事で以前、接触性皮膚炎を起こしやすい添加物として、還元ラノリンとパラベンを挙げたことがありましたので、併せてお読みください。

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まとめです 

今回、ヒルドイドローションの添加物変更についてまとめました!

パラベン類同士の変更ではありますが、防腐剤としての効果は上がることが期待できることミリスチルアルコールという、安全性が多く評価されているものが添加されたこと、還元ラノリン自体がなくなったことで接触性皮膚炎のリスクも減ったことなど、ヒルドイドローションを使う側としてはメリットが多いように感じました。クリームやローションは、どうしても水分が多くなる分、細菌の繁殖が怖いですよね。少しでも安全な防腐剤を選んでいただけたことが確認でき、嬉しく感じました。 

みなさんがお肌が良い状態で過ごせますように。 

ママ薬剤師M子 

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【参考文献等】
  1. ヒルドイドローション0.3% 処方変更及び添付文書の改訂のご案内[]
  2. 「パラベンの効果と安全性」、上野製薬株式会社[]
  3. レシピプラス 皮膚外用剤のトリセツ[]
  4. BUNSEKI KAGAKU Vol. 51, No. 6, pp. 397-401 (2002) []
  5. 医薬品添加物安全性データ []

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