ママ薬剤師M子です。今回から複数回に渡って、夏に気になる虫刺されの時に病院でよく処方されるお薬や市販薬についてお届けしたいと思います。
お子さんの虫刺されで病院を受診した際、「どんなお薬が処方されるんだろう?」と気になるママやパパも多いですよね。自己判断で市販薬を使う前に、病院で処方されるお薬について知っておくと、治療の時にでるお薬などについても安心して使えますね。

今回は、病院で処方されることの多い虫刺されのお薬に絞って、薬剤師ママM子がその種類と特徴を分かりやすく解説しますね。
病院で処方される主な虫刺されのお薬

病院では、お子さんの虫刺されの症状や程度に合わせて、様々なお薬が処方されます。
主なものとしては、炎症を抑えるステロイド外用薬がまず初めに使用されることが多いです。
必要に応じて痒みを鎮める抗ヒスタミン薬や他成分の外用薬、化膿して細菌感染がある場合に用いられる抗生物質入りのお薬などが用いられます。
また、肌のダメージを回復させるのに役立つ保湿剤も一緒に、単剤もしくは混合して処方されることも多いです。

保湿剤は直接、痒みや腫れを抑える効果があるわけではなく、肌に炎症が起こりバリア機能が落ちることによる回復の遅れを助けてくれるという意味で一緒に処方されることがあります。
この場合は、一緒に塗ることで治癒を早めるというものではなく、不足分を補って治りをよくしてくれる効果が期待できます。
炎症を鎮めるステロイド外用薬
病院で処方されるステロイド外用薬は、虫刺されによる赤み、腫れ、痒みなどの炎症を効果的に抑えるお薬です。強さによっていくつかの種類があり、症状の程度によって使い分けられます。
虫刺されでよく処方されるステロイド薬(一例)
ストロンゲストクラス(めちゃ強い)
デルモベート1
- 最強クラスのステロイドの一つで、強い炎症を速やかに鎮めます。長期間使用すると全身への影響が高くなるため、症状が落ち着いたら、より弱いステロイドや他の治療に切り替えることがあります。市販薬にはこのレベルはありません。
ストロングクラス(そこそこ強い)
リンデロンVG2
- 強めではあるがデルモベートから2段階下(ストロンゲスト、ベリーストロングに次ぐ)のランクにあたるステロイドに、細菌の増殖を抑える抗生物質が配合されています。抗生物質が入っているため、掻きむしって患部が化膿してしまった場合に処方されることが多いです。
- 市販薬にはリンデロンと同じ成分の市販薬はありますが、抗生物質が配合されたリンデロンの製品は今のところありません。
ベトネベート3
- リンデロンと同程度のステロイドで、炎症をしっかり抑えます。
- こちらは、リンデロンと異なり、同じステロイド成分にプラスして抗生剤配合の市販薬が販売されています(商品名:フルコートf、指定第2類医薬品なので登薬剤師のいない登録販売者で販売が可能)。
ミディアムクラス(普通の強さ)
- キンダベート: 顔や全身の広い範囲には副作用のリスクから使うことは勧められません。
- ロコイド、アルメタ: 比較的軽い虫刺されや皮膚炎などで広く用いられることが多いです。副作用が比較的少なく、顔や全身にも用いられやすいのが特徴です。

ステロイドと聞くと、副作用が心配になる方もいるかもしれませんが、医師や薬剤師の指示通りに使用すれば、過度に心配する必要はありません。
ただし、症状によって使い分ける必要があり専門的な知識を必要としますので、症状がひどい時や心配なときは受診するようにしましょう。(ステロイドの外用薬に関しては、ランク分類など別の記事で詳しくまとめていますのでよかったら一緒に読んでみてください)
M子の参考情報
「抗生物質=抗菌薬が配合されたリンデロンの製品は今のところない」と記載しましたが、市販薬のリンデロンが入っている製品としてリンデロンVsプレミアム4というものがあります。こちらにリンデロンと一緒に配合されているのが、「イソプロピルメチルフェノール」という殺菌成分です。抗生物質と殺菌成分、どちらもをやっつけてくれるイメージですが、厳密には異なる定義をもちます。別記事でも紹介していますのであわせてお読みください。
●抗菌とは・・・細菌の増殖を抑えること意味する攻撃対象は細菌に限定されていて、なおかつ、やっつけるべき細菌に対して集中的に作用して効果を示すので、やっつけるべき細菌が特定されていたら有効性が高いと言える(耐性菌などの話は別として)。
○殺菌とは・・・菌を殺したり死滅させることを意味する。ただし、攻撃対象の菌やウイルスなどがどれぐらい死滅しかの程度は不明で、有効性が担保されていない。
つまり、抗菌薬は「この細菌をやっつけます!」とわかりやすいですが、殺菌薬は「とりあえずやっつけるけど、何をどこまでやっつけたかまでは聞かないで」という感じです。やっつける細菌をある程度保障できる分、抗菌薬は処方薬という肩書きが持てるのだと思います。
次回は、ステロイド以外の抗ヒスタミン薬、保湿剤などについてお伝えしたいと思います。
次回もお楽しみに!誰かのお役に立ちますように。最後までお読みいただきありがとうございました。
ママ薬剤師M子
【参考文献等】
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