こんにちは、薬剤師M子です。 前回、経口補水液に関する疑問点についてお伝えしました。 今回も”その2″として、「イオン飲料ってなに?経口補水液とポカリスエットなどの違いは?」についてM子視点でまとめてみました。
各飲料の組成などを書いていて少しマニアックかもしれませんが、その下にポイントをまとめていますので併せて読んでいただけると幸いです。
②イオン飲料とは?ポカリスエットとアクエリアスの違いは?
イオン飲料とは?
まず、イオン飲料についてです。「イオン」ってついていると、なんだか体に良さそうに感じますよね。
イオン飲料とは、汗で失われた水分やナトリウムなどの電解質(イオン)が、体にスムーズに吸収される飲み物のことです。そのため、ポカリスエットやアクエリアスなどのスポーツドリンク、経口補水液ともにイオン飲料と言えます。
その中でも、経口補水液は、脱水により不足する電解質を補給するため、電解質の濃度が高く、不足したナトリウム・水の吸収を速めるために糖分の量が少なく調製されています。一方、スポーツドリンクは、エネルギーの補充のため糖分が多いのが特徴です。
経口補水液、スポーツドリンクなどの組成の比較
国内で発売されている一部の製品と、ナトリウム(Na)やカリウム(K)などの組成も比較してみました。経口補水液の基準は海外のものなどで何種類かありますが、今回、消費者庁でも使用されているWHO(世界保健機関)の基準と新たに制定された消費者庁基準をベースに各イオン飲料についてまとめました。
種類 | 製品名 | 分類 | Na (mmol/L) | K (mmol/L) | 炭水化物 (g/dL) | ブドウ糖 (mmol/L) | 浸透圧 (mOsm/L) | M子のポイント |
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経口補水療法指針 (WHO2002年)基準 | 75 | 20 | 1.35 | 74.9 | 245 | |||
消費者庁基準 | 特別用途食品 | 40-60 | 15.1-25.1 | – | 74.9-138.8 | 200-310 | ||
経口補水液 | OS-1 | 特別用途食品 | 50 | 20 | 2.5 | 100 | 270 | 脱水時の吸収が早い |
アクエリアスORS | 特別用途食品 | 43 | 21 | 1.5 | 83.2 | 263 | 柑橘系ですっきり、BCAAなし | |
アクアライトORS | 特別用途食品 | 35 | 20 | 5.0 | 100 | 200 | 果物の甘み+塩分 | |
乳児用イオン飲料 | アクアライト | 一般食品 | 30 | 20 | 5.5 | – | 260 | 小児用に果物の甘み |
スポーツ飲料 | ポカリスエット | 一般食品 | 21 | 5 | 6.2 | – | 324 | 自然の糖質 |
ポカリスエット イオンウォーター | 一般食品 | 17 | 5 | 2.7 | – | – | カロリー低め、のみやすい | |
アクエリアス | 一般食品 | 17 | 2 | 4.7 | – | – | BCAA配合あり、運動時向き |
ポカリスエットとアクエリアスの違いは?
経口補水液ではありませんが、「経口補水液」をよく耳にするようになる以前からとても有名なこの2種類の製品。
違いとしては、上の表からもわかるように ポカリスエットに関しては、炭水化物、ナトリウム、カリウムなどの電解質が多めなので、アクエリアスよりもエネルギーの補充と電解質の補充に向いています。発熱して食欲がない時などに効果的と言えると思います。
一方で、アクエリアスは、BCAA(分岐鎖アミノ酸)という、運動した時にエネルギーを作る手助けをしてくれるアミノ酸が含まれており、運動時向けと言えそうです。
味の観点から
ポカリスエットは、自然の糖質が使用されていて、しっかりとした甘さはあるものの、すっきりした味わい、アクエリアスは、スクラロースという人工甘味料が含まれており、マイルドで飲みやすいですが、口に甘さがしばらく残ってしまう方もいるかもしれません。
含まれている成分やその割合も厳密には異なりますが、この2商品に関しては、結局は味の好みで選ばれることも多いと思います。
経口補水液のOS-1にも人工甘味料のスクラロースが使用されているため、電解質の組成が異なりますが、甘さの観点からいえば、アクエリアスが好きな方は飲みやすいかもしれません。
小児用のアクアライトORSは、経口補水液にしてはNaが低めに調製されています。これは、近年ではロタウイルスや病原性大腸菌などの、コレラではない下痢(電解質の喪失がコレラほど激しくない下痢)も多いため、これらの病気による下痢にも適応できるような組成となるように改良されているそうです。
ポカリスエットと名前の似た製品で、ポカリスエットイオンウォーターがありますが、こちらは自然由来の甘味料のステビアやラカンカエキスが使用されています。エネルギーがポカリスエットに比べて抑えめです。汗をかいたときにカロリー抑えめに体調回復したい方におすすめです。
アクエリアスとアクエリアスORSは名前から似ています。しかし内容はずいぶんと異なります。
まず、アクエリアスは先に述べたBCAAが配合されていますが、アクエリアスORSは配合されていません。すなわち運動後の筋肉の疲れにアクエリアスORSがアクエリアスほど向いているとは言い切れません。
また、ナトリウムなどの電解質濃度の大きな差があり、アクエリアスORSは経口補水液で高めに設定されています。(≒OS-1よりです。)名前が似ているため、目的に応じて使い分けるようにしましょう。
M子の味比べ(M子視点、汗をかいていないときの比較)
上では、理論を並べてみましたが、実際のところの飲み比べをM子でしてみました。
ポカリスエット:香りはすっきりしていて嫌みがない、味は甘みが濃いがすっきりとした味わい
ポカリスエットイオンウォーター:香りが清涼感あふれる、味は薄めだがほどよく甘くてすっきり、ごくごく飲める
アクエリアス:甘みがあり美味しいが、風味が強め、後味でわずかに甘さが残る
OS-1:ポカリスエット類とアクエリアスに比べて香りは少ない、格段にしょっぱい
アクエリアスORS:柑橘系の香りがふんわりと心地よい。ORSならではの塩分と、すっきりとした甘みをうまく融合させた味付け
汗を大量にかいて脱水になったときにはOS-1が一番効率よく回復できることを身をもって感じました。反面過剰にとると塩分の摂りすぎになることもよくわかりました。
経口補水液は電解質が特別多めに設定されているため、医師や薬剤師等の指導の元で飲用されることが望ましいですが、イオン飲料ひっくるめて考えたとき、最終的には、個人の体調のみならず味の好みが影響する部分も少なからずあると思います。迷ったときに、背中を押してくれる一つの情報になれると幸いです。
次回予告
次回は、経口補水液疑問点その3として、「経口補水液を子どもが飲んでくれないときの代替手段はあるの?」「妊婦さんは経口補水液飲んで大丈夫?」について書いていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。
ママ薬剤師M子
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