ママ薬剤師M子です!
前回は、M子の子供M美におこった、便秘の事件の詳細をお伝えしました。その最後にお伝えした、M美も処方され、また、一般的な便秘に処方され非刺激性にも類する「酸化マグネシウム」について書いていきたいと思います。
便秘薬の種類(刺激性とは)
日本で小さいお子さんによく使用される便秘のお薬の種類は、テレビのCMなどでも聞かれたことがあるかもしれませんが、刺激性と非刺激性に分かれます。
刺激性の、刺激する相手は【大腸】です。便が溜まっている大腸にまでお薬が到達し、直接大腸を刺激して動かすことで排便を促すタイプのお薬です。
一方で、非刺激性のお薬とは、(複数ありそれぞれ作用する部位が異なったりしますが、)刺激性の下剤とは違って腸管の中にお水を引き寄せることで便を柔らかくする作用があるものが多いです。
まとめると、
刺激性の特徴:直接的に働くので高い効果が期待できる、反面、腹痛など副作用が出やすい
非刺激性の特徴:直接的ではないので作用の仕方は刺激性に比べて緩やかだが、腹痛などの副作用は少なく、体に負担がかかりにくい
今回、体に負担がかかりにくく、最も頻用されている酸化マグネシウムに焦点を当ててみました。
酸化マグネシウムっについて書いていきます
酸化マグネシウムってどんなお薬?
「酸化マグネシウム」という名前を聞くと、「酸化」しちゃうのは良くないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが(患者さんでそのように言われる方に出会ったのでご紹介しました)、「酸化マグネシウムは、マグネシウムを酸化させて製造された化合物の名前」であり、飲んだ人を酸化させて老化させる等の意味ではありません。
このお薬は、お薬が溶けずに腸管の中にとどまることで、浸透圧という水を動かす働きにより、腸管の中へ水分をひきよせて効果をあらわす、浸透圧性と言われる下剤です。腸管の水分をひきよせることで、水分を奪われた状態の便を柔らかくし、便秘を改善します。
この「酸化マグネシウム」は、制酸剤として、また、尿路シュウ酸カルシウム結石の発生予防で使用されることもありますが、今回は便秘時に絞って書いていきたいと思います。
子どもにも使用できるように色々な種類があるんです!
酸化マグネシウムには、お薬の形(剤形)が、細粒・原末・錠剤の3種類があり、幼児以上が処方の対象となっています。
乳児対象の浸透圧性の下剤としては、今回対象外のお薬で、マルツエキスやラクツロースなどがあります。
酸化マグネシウムの服用量の目安はどうなってますか?
酸化マグネシウムの便秘に対する服用量の目安は、
大人/子ども | 年齢幅 | 1日の服用量 |
---|---|---|
成人 | 全年齢 | 2gを食前または、食後の3回に分けて服用 |
小児 | 新生児(3kg) | 0.10g |
1ヶ月(4kg) | 0.20g | |
3ヶ月(6kg) | 0.30g | |
1歳(10kg程度) | 0.50g | |
3歳(13kg程度) | 0.65g | |
6歳(20kg程度) | 1.00g | |
8歳(25kg程度) | 1.25g |
実は、添付文書上は小児の服用量の記載はないのですが、
- ①ガイドライン上、便秘への酸化マグネシウムは効果が高いことが証明されていること
- ②比較的安全性が高いこと
- ③お薬の値段も安価で処方しやすいこと(大体1gあたり、1.54円です2)
などの理由で小児にも広く使用されているお薬です。
M子が酸化マグネシウムの処方を受け取った時は、本当に幅ひろい投与量で処方されるため、体重が大きい子供さんの場合、体重あたりで計算すると成人量の2gを超えてしまう場合がありますので、成人量を超過していないかの確認はしっかりさせてもらっています。
次は、お薬にはつきものの、副作用のお話です
酸化マグネシウムの副作用
実際にお薬を飲んだとき、どんな症状に気をつけなければならないかといことも気になりますよね。
酸化マグネシウムの副作用には、一般的なものとして、下痢などの消化器症状、重篤なものとして高マグネシウム血症があります。この高マグネシウム血症にとくに注意が必要です。
マグネシウムはそもそも体に吸収されにくいのですが、腸管内で少し血中に吸収されてしまいます。
吸収が長期に及ぶと、体の中にマグネシウムが溜まってしまう恐れがあり、とくに高齢の方で腎機能が低下した方、または腎不全のある方、腎機能正常でも長期に服用している方にはが注意が必要と言われ、使用は必要最小限にとどめることが望ましいと言われています。
マグネシウム自体は、体内に多く含まれるミネラルで、一部の食物にも含まれていますが、他の食物に添加されたり、サプリメントとして利用されたりもしています。そして、一部の医薬品にも配合されており、酸化マグネシウムはその一つになります。マグネシウムは体内の様々な反応に関わって生命を維持することに関わっている大変重要なミネラルですが、体内のマグネシウムの量が少なかったり、逆に多くなりすぎたりすると、命に関わってしまう場合があります。
高マグネシウム血症を疑う症状としては、
- 低血圧
- 吐き気
- 顔面がほてる
- 喉の渇き
- おしっこがでなくなる(尿閉)
- うつ
- 筋力低下につながる倦怠感
- 呼吸困難
- 不整脈
- 心不全
- 意識障害
- 傾眠などがあります。
とくに便秘症の方は腎機能が正常な場合や通常量以下の量であっても重篤な副作用が生じることがあるため注意が必要です。 3
便秘症に用いるお薬ではありますが、飲みはじめて上記の症状が起きる、または、その他にも気になる症状があるときにはお薬を飲むのを中止して医療機関に相談するようにされてください。
このようなことを効くと怖くて飲みたくなくなるかもしれませんが、頻度としては高くなく安全性は高いと評価されています。
PMDAによる副作用報告件数は、平成25年度の酸化マグネシウムの推定使用患者数が1,000万人であるのに対し、酸化マグネシウムによる高マグネシウム血症は、平成24年4月から平成27年6月までに29例(うち死亡4例)報告され、このうち19例(うち死亡1例)は酸化マグネシウムの服用と因果関係が否定できない症例ということでした。
万が一、副作用が疑われる症状が出てしまった場合には中止することになるかもしれませんが、注意しながらも、まずは飲んでみて便秘がうまく治れば嬉しいですね。
まとめ
今回は、子どもの便秘にもよく使われる酸化マグネシウムってどんなお薬という内容でお話しさせてもらいました。
酸化マグネシウムは色々な形があって、飲みやすさも工夫されています。M子も、小児科や老人ホームの方などから処方を受け付けたことがあり、老若男女に必要とされる薬だと思っています。
副作用も念のため書きましたが、適量を飲み、医師や薬剤師にも定期的にみてもらうことで、万が一のときには早急な対処が必要ですが、過度な心配はしなくて大丈夫です。しかし、最近は上にも書きましたがサプリメントに含まれていることを知らず、思った以上にマグネシウムを摂取してしまうケースもあると思います(特に海外製サプリなど)。子どもにはサプリを飲ませないことの方が多いと思いますが、何かおかしいなと思うきっかけになれば幸いです
次は、酸化マグネシウムを飲むときの便の目安や目標について触れていきたいとおもいます!
最後までお読みいただきありがとうございました。
ママ薬剤師M子
【参考文献等】- 日局酸化マグネシウム末、酸化マグネシウム細粒83%「ケンエー」、マグミット錠 新小児薬用量改訂第9版を参照[↩]
- 酸化マグネシウム薬価[↩]
- 厚労省HP[↩]
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