前回、「エイベリス点眼液」から新しいお薬へ変更しました。とお伝えしましたが、そのお薬は「ミケランLA点眼液」という目薬になりましたので、ミケランLAについてまとめてみました!
前回の振り返りを読んでいただけると分かりやすいかもしれませんが、診察の結果と副作用を照らし合わせた結果、新しいお薬へ変更することになりました。
新しいお薬の紹介の前に
まずはじめにですが、前回、M子の眼圧についても記録を載せた記事を書きました。ただ、この眼圧は一般的に、「正常な」眼圧値です。どうして「正常」なのにも関わらず、眼圧を下げないといけないのか、についてご紹介したいと思います。
この根拠となるものが、正常眼圧緑内障の人々に対して研究を行った結果得られた、緑内障ガイドライン第5版1に記載されている以下の文言になります。
「治療の目標眼圧に関して,米国での多施設共同研究の結果では,治療により無治療時眼圧から30%以上の眼圧下降効果を得られた群と無治療群では視野障害進行に有意差があり,眼圧下降が有効であることが報告されている」
簡単に言うと、正常眼圧の緑内障であっても、眼圧を下げる治療を行った方が、緑内障の進行を、より抑えることができるからということになります。
上の図は、エイベリスのときにも載せたものです。緑内障について再度説明しますと、「緑内障とは、視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患」と定義されています2。
眼圧は、通常、眼房水(以下、房水)の産生・排出のバランスが維持されることによりコントロールされています。眼圧が上がる原因は(房水の産生はほぼ一定であるため)、房水がうまく排出できないことにより上がってしまうと考えられています。そこで、緑内障のお薬は、主に房水の①産生を抑制する、もしくは、②排出を促進することで眼圧を下げる効果を発揮します。M子は今回、①の作用をもつミケランLAを試すことになりました。
ミケランLAについて
今回、M子が新しく使用するお薬の正式名称は、ミケランLA点眼液1%(一般名:カルテオロール塩酸塩水和物)といいます。
ミケラン点眼液は、エイベリスなどのプロスタノイド類と作用機序が異なる、β(ベータ)遮断薬と呼ばれる、歴史的に長く使われてきた点眼薬です。 β遮断薬は、房水の産生を抑制し、しっかりと眼圧を下降させる効果があります。また、縮瞳や結膜充血などの局所的な副作用が少なく、長く続けやすいお薬として知られています。
ミケランは、ミケランとミケランLAの2種類があります。
ミケランとミケランLAの違いは何かというと、
- ミケランの効き目は1回の点眼で約12時間(2-4時間がピーク)続くと切れるので、1日2回点眼します。
- このミケランの効き目にプラスして、添加物を加えることで長持ちさせ、1日1回で24時間眼圧を下げる効果を持続させてくれるお薬が開発されました。それがミケランLAです(他にも、1日中持続するように作られたβ遮断薬の目薬がありますが、それぞれ添加剤の種類が異なります。後ほど説明します。)
ミケランの利用に関して選択するポイント・特に注意が必要な人
ミケランLAの特徴としては、主に以下が挙げられます。
- 緑内障の治療でまず始めに使われやすい点眼薬の種類の一つ。プロスタノイド類(エイベリスはプロスタノイド類です)に次いでよく使われる。
- 高眼圧症と緑内障で用いられる。
- ミケランLA点眼液2%は、効果が持続するように工夫されており、1日1回の投与で、眼圧降下作用も比較的良いお薬(眼圧下降率:15~20%程度 ※エイベリスなどのプロスタノイド類(30%)よりは少し劣る)で、安定した眼圧下降効果が証明されている。
- 色素沈着がなく、点眼後の刺激も比較的少なく、使いやすい。
- 夜点眼するよりも、朝点眼した方が効果的(交感神経の活動は夜間に低下し、眼房水の産生が少ないため)3
- 使い続けると効き目が落ちることがある。(※2ヶ月程度お休みすると回復しやすいことも報告されている)4
以上が、ミケランLAの主な特徴です(医師により判断が異なりますが一般的なお話です)。そして、次は、何らかの疾患をお持ちの方や妊産婦の方、保存などに関する注意点になります。
- β遮断薬に類するため作用点が全身に存在し、気管支を収縮させたり、心臓にも作用したりすることがあるため(β遮断薬については、メプチンのページでも書いてますので参考までにお読みください) 、気管支喘息、気管支痙攣又はそれらの既往歴のある患者、重篤な慢性閉塞性肺疾患のある患者、コントロール不十分な心不全、洞性徐脈、房室ブロック(Ⅱ・Ⅲ度)又は心原性ショックのある患者は、症状が悪くなる可能性があるため使用できない(禁忌)こととなっている。 567
- 妊娠・授乳時の緑内障(解放隅角緑内障)に対する点眼液の使用は、原則的に中止されている(やむをえない場合は安全性を考慮して継続する場合もある)。
- ミケランなどのβ遮断薬は乳汁中への移行が報告されている(乳児に与える影響については不明な点が多い)。8
- 保存の方法は、室温保存(1~30℃)。冷蔵庫内も室温の範囲内のため、室温が高温になる可能性のある時には冷蔵庫保存がベター。
ミケランLAの主な副作用 について
ここまでは、ミケランLAの特徴や、注意すべき人について触れてきました。ここからは、使用後の副作用について書いていきたいと思います。
この副作用は必ず起こるわけではありません。ただし重大な副作用や、その他の症状でも、点眼後に著しく体調が悪くなったなどの場合にはすぐに病院へ、夜間であれば救急車などの対応が必要な場合もあります。
また、一定期間は何事もなかったのに、しばらくして心臓の副作用が起きた事例も報告されていますので、初めて使用する際はもちろん、継続して使われている際にも注意していただいた方が良いです。万が一、歩いているときの息切れがひどくなった、動悸が頻繁に起こるなど異常を感じた時には、医師へはやめに相談してください。
今回のまとめ
今回はM子がエイベリスからミケランLAに変わったことについてと、その作用・副作用についてお伝えさせていただきました。
エイベリスと違ってミケランの作用機序が変わっているので実際使ってみてまた使用感や効き目などお伝えできればと思います。
次回は、ミケランで少し注意してほしい事やM子の薬剤師としての経験についてお伝えできればと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ママ薬剤師M子
【参考文献等】- https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/glaucoma5th.pdf[↩]
- 緑内障診療ガイドライン第5版[↩]
- 緑内障薬物治療薬の現状と未来,薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn. )135,129~133(2010)[↩]
- 点眼薬クリニカルブック第2版,p137[↩]
- ミケラン点眼液2%・ミケランLA点眼液2%添付文書[↩]
- ミケラン点眼液2%・ミケランLA点眼液2%インタビューフォーム[↩]
- 日経ディカル,光文社新書 深作秀春 緑内障の真実[↩]
- 緑内障診療ガイドライン(第5版)[↩]
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