前回、「私、実は緑内障になったんです」のきっかけ編を書かせていただきました。会社の健康診断で眼底検査を実施したときに、発覚しました。
今回は、M子が発覚後、実際に処方されたお薬について薬剤師目線でお伝えできればと思います。
M子が緑内障で実際に処方されたお薬
早速ですが、M子が処方されたお薬は「エイベリス点眼液0.002%」でした。
これは、緑内障の治療で初めによく選択される、プロスタノイド関連薬という系統に分類される点眼薬の一つです。一般名は、オミデネパグ・イソプロピルといいます。(読みづらい・・・)
エイベリスは、EP2という受容体を介して眼房水を排出することで眼圧を下げ、緑内障の進行を遅らせることができるお薬です。
エイベリスの注意点
お薬なので副作用が発生する可能性もやっぱりあります。
その他の注意点としては以下のものがあります。
・充血する頻度が高い(5人に1人程度)。
・基本冷所(2-8℃)保存。※室温(1-30℃)では1か月以内のみ可能。
・他の緑内障点眼薬と併用できないものもある(タフルプロスト製剤:タプロス、タプコム点眼⇒眼の炎症が高頻度で見られる報告がある)
・添加剤であるベンザルコニウム塩化物が吸着される可能性があるため、コンタクトレンズを装用している時は、点眼前にレンズをはずし、点眼後少なくとも5~10分間の間隔をあけて再装用する。
ここに挙げた物は、主な副作用の可能性なので、他にも注意点はあります。詳しくは処方されたときに医師、薬剤師に聞いてみてくださいね。
M子のお薬が出たときの感想
緑内障と聞いて、お薬が処方される前に、私がはじめに、「(薬剤師的に)あの薬だったら大変だな」、と正直思ったことがあります。
点眼薬の副作用です。どんな副作用かというと、
- 昔からあるプロスタノイド関連の点眼薬(例:キサラタン点眼、ルミガン点眼など)は、眼圧抑制効果に優れていて、全身的な副作用も少ないため、まさに「時代を画した緑内障点眼薬」として評価されています。そして、緑内障を治療する際に、はじめに処方されることが多い目薬です。
- ただし、目薬を目の外側にこぼすと、そこが黒く沈着したり、瞼がくぼんできたり、まつ毛がバサバサに増えたりしてくる、という点があります(10人に1人くらいの頻度)。
- そして、一度沈着するとほぼ元に戻らないので、なるべく他の皮膚につかないように、点眼後は洗顔を必ず(効果と点眼忘れ両方の観点から、5分後をおすすめしています)、など、注意点が多々あります。
髪の毛の色素を作っているメラニン色素と結合しやすい性質があるからだそうです。(まつ毛が増えるのは、毛穴に作用してまつげの成長期を長くすると考えられており、実は美容業界で応用されていたりもします)
このような副作用があるので、とくに若い女性では、このようなコスメティックな理由により、点眼を中断してしまう場合も多いということを勉強会で聞いたことがあります。また、実際使用されている患者さんも、瞼がくぼんできたことを気にされていたり、点眼時、かなり神経を使っている方もいらっしゃいました。
そのような中、今回M子に処方されたエイベリスは、プロスタノイド関連薬の中でも、EP2受容体というものに作用して眼圧を下げてくれるという新しい機序の点眼薬で、このような色素沈着などの副作用の報告がないお薬なのです。
小さい子供の子育て真最中。おしゃれは楽しみたいが、それ以前に、点眼するときにじっくり時間をかける余裕がない、化粧も時間との勝負の生活で鏡もろくに見ることができない中、知らぬ間に見かけが大きく変わっていく副作用は、できるものなら避けたいなと思っているので、エイベリスの存在に感謝してしまいました。
- Q目が黒くならないお薬があるのに、なぜその薬を使わないのですか?
- A
エイベリスを含む、プロスタグランジン関連薬は、強力に眼圧を下げてくれますが、反面、眼圧を下げる効果が不十分な症例が7-10%にみられます(non-responderと総称されます)。
さらに、プロスタグランジン関連薬は、それぞれが似た効き方ですが、一つのお薬の効果が悪くても、別の種類で眼圧が下がるなど、成分の種類によって眼圧を下げる効果に個人差があることも知られています。1
そのため、まずは点してみて、効果を確認し、効果が無ければ別の種類を試すということが必要な場合があります。
まとめ
実際に緑内障になって、処方されたお薬を使った時に、
・どれほどの副作用がでるのか、効果が出てくれるかどうかもわからない。
・100人いたら、10人は効きづらい人がいるという統計は知っている。 (すべての種類の点眼薬で効果が出なかったらどうしよう)
・視神経が障害されていると聞くと、怖い、少しでも眼圧を下げたい。
・これから一生、目薬さしていくのか~~と、
などなど、実際に患者となり不安な気持ちにもなりましたが、このように記事にして、誰かの役に立つとうれしく思います。
今回のテーマはここまでですが、今後、実際に点した結果や、検査結果などお伝えできればと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ママ薬剤師M子
【参考文献等】- 金原出版株式会社 庄司純著書 点眼薬クリニカルブック第2版,p146[↩]
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