こんにちは。ママ薬剤師のM子です。 今日は、私の家族にとても馴染みの深いお薬「チラーヂンSとは」についてお話しさせていただきます。実はM子の娘は、生まれてすぐに甲状腺機能低下症と診断され、新生児の頃からチラーヂンを服用しています。

M子自身も薬剤師として、赤ちゃんからご高齢の方まで、多くの患者さんにチラーヂンを調剤してきました。今回は、特に小さなお子様を持つご家族向けに、このお薬について詳しくご説明していきますね。
チラーヂンSってどんなお薬?

まずは、チラーヂンSってどんなお薬かということについて説明していきたいと思います。
チラーヂンSは、レボチロキシンナトリウム水和物(T4製剤と表現されます)という名前の、甲状腺ホルモンのお薬です。
「甲状腺ホルモン」は体の中で作られるホルモンですが、チラーヂンSはこのホルモンが不足しているときに、甲状腺ホルモンを体の外から補充することで治療を行うことができるお薬です。
チラーヂンSは半減期(体内に入ってから代謝や排泄などにより半分に減るまでに要する時間)が約6~7日と長いのが特徴です。

ちなみに、チラーヂンという名前は、「Thyroid(甲状腺)より THYRADIN とし、Synthesis(合成)より-Sが付加され、THYRADIN-S=チラーヂンS」となっているとのことです。甲状腺に効く薬ということですね。1
甲状腺ホルモンの働き
甲状腺ホルモンは、こんな大切な働きをしています:
- 体の代謝を整える(脂肪の分解や血糖の調節など)
- 体温を維持する
- 水や電解質(ナトリウムなど)の排泄を促す
- 心臓の働きを整える
- 脳の発達や器官の成長、発育を促し赤ちゃんや子供の成長をサポートする
つまり、体の基本的な機能を維持するために、とても重要な役割を果たしているのです。
チラーヂンSが処方される代表的な病気と症状
チラーヂンSは、以下のような病気の時に処方されます
- 先天性甲状腺機能低下症(クレチン病)
- 赤ちゃんの時から甲状腺の働きが弱い場合
- 新生児マススクリーニングで見つかることが多い
- 甲状腺機能低下症(原発性および中枢性) ※原発性では橋本病が最も多い
- バセドウ病の治療後
- 治療により甲状腺機能が低下した場合
- 甲状腺手術後
- 手術で甲状腺を摘出した後
- 粘液水腫
甲状腺機能が低下すると起こりやすい症状として、
臨床症状(特定の病気でみられる症状や兆候):無気力、易疲労感(疲れやすい)、眼瞼浮腫(まぶたの腫れ)、寒がり、体重増加、動作緩慢(うごきがゆっくりしている)、嗜眠(重症のため外の刺激に応じられず眠ったような状態)、記憶量低下、便秘、嗄声など 2
自覚症状(自分で感じることのできる症状):発汗減少(汗をかきにくい)、嗄声、知覚異常(寒さ暑さ痛みなどの感覚を感じにくい)、皮膚乾燥、便秘、難聴、体重増加 3

娘の病気がどんな症状があるのかを詳しく知り、異変には早く気付きたいM子なので、臨床症状・自覚症状でかぶっている項目もありますが、あえて記載させていただきました。
甲状腺機能が低下すると、どちらかというと全体的に元気がなく、体内も含めて(便秘など)動きが鈍くなる印象ですね。
M子の娘に関しては、今は検査値が落ち着いているからかもしれませんが、今あてはまるものとしては、ぽっちゃりしているところ(体重増加)、便秘をしやすいところ、少しがらがら声(嗄声)なところかなと感じました。
ただし、元気はあるし食欲もある、どちらかというと暑がりです。治療も上手くいっているとのことなので、あてはまっていると感じた症状は、娘の性格や食生活によるものの方が大きいかもしれません・・
チラーヂンSの種類と使い方
チラーヂンSの概要とどんな病気に処方されることがあるかについてお伝えしましたので、今度はどんな種類があるのか見ていきたいと思います。
チラーヂンSの種類
チラーヂンSは、「錠剤・粉(散)・注射液(静注液)」の3種類があります。この中でも錠剤は1錠に含まれるチラーヂンSの量で種類が異なります。その規格は以下の5種類です。 4
規格 | 12.5μ | 25μ | 50μ | 75μ | 100μ |
---|---|---|---|---|---|
錠剤の色 | 濃ピンク | ピンク | 白 | 薄い黄色 | 黄 |
参考写真 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
※色は目安として覚えておくと便利です
チラーヂンは、赤ちゃんの極少量(5μg/kg:例 3kgでは15μg)から、成人では400μgくらいまでの投与量で幅広い調節がなされるため、このように規格が沢山あります。調剤する薬剤師としても、規格間違いをしないように細心の注意を払っていますが、チラーヂンのシートと錠剤の色のバラエティに随分と助けられています。

M子自身の体験として、子供のチラーヂンの調剤ミスに遭遇したこともありました。
低用量だっため錠剤を粉砕をしてもらっており、いつもはチラーヂンのピンク色(25μgの錠剤のピンク色)が必ずあったものが、用量の変更がないはずなのに真っ白(おそらく50μ)になっていたために気づきました。
調剤過誤がないことが第一ですが!ママ・パパとしても、いつもと同じお薬の色に変化がないか確認できると、さらに安心安全ですね。
パパが取りにいってくれましたが、この件以来、パパは薬の色や形が前回と変更がないか、結構気を付けてくれるようになりました。
チラーヂンSの服用方法・タイミング
添付文書
添付文書上は、1日1回で、日本のチラーヂンSの添付文書には、時間帯や服用時点の指示はとくに記載されていません。
チラージンSの正体のレボチロキシンナトリウム水和物(T4製剤)は、体内で産生される甲状腺ホルモンとしては1日の中で変動が少ないと言われています。ただし、レボチロキシンを産生するホルモン(甲状腺刺激ホルモン:TSH)や別の甲状腺ホルモンには変動しやすいものもあります。それぞれのホルモンが毎日相互に働きあって体の状態を維持しているため、チラーヂンSを服用する時間帯や飲み方は、毎日なるべく一定にするのがベストです。
日本の添付文書にはありませんが、海外では空腹時に飲むことが書かれているものもあり、薬の効果をはやく上げたいときには空腹時投与の指示がでることもあります。
東日本大震災の際には、チラーヂンSの供給量が不足したことからドイツのサンド社から緊急的に輸入されていたこともあるようです。5この製品は今は日本では使われていません。
そのサンド社の添付文書では、[Swallow the tablets with a glass of water in the morning on an empty stomach, at least 30 minutes and preferably 60 minutes before any food or other medicines.(朝、空腹時にコップ一杯の水で錠剤を飲み込み、少なくとも30分前、できれば食品や他の薬の60分前に飲み込みます。)]との記載があります。6

M子は娘が生まれたばかりのときから朝食後(はじめはミルクのあと→そして朝食後)にあげています。空腹時がベストとはしっているものの・・子供が飲んでくれるタイミングとして確立してしまっています。
医師と相談し(薬自体を拒否していた時期もありました涙)、検査値が安定していることと、他に鉄剤などの、同時に飲まない方が良い薬は処方されていないことなどから、このまま朝食後に続けてみようということになりました。
先天性の場合、一生飲み続ける可能性も高いので、無理なく続けられる方法を医師と相談しながら決めていけると良いですね。
まとめ!
チラーヂンSは、甲状腺ホルモンが不足している方に処方される大切なお薬で、赤ちゃんからご高齢の方まで、幅広く使用されています。甲状腺ホルモンは、体の代謝、体温維持、心臓の働き、成長のサポートなど、まさに体の司令塔のような重要な役割を果たしています。
先天性甲状腺機能低下症や手術後の補充療法など、様々な場面で活躍するこのお薬は、錠剤では12.5μgから100μgまでの規格があり、さらに粉薬もあるため、きめ細かい用量調整が可能で、赤ちゃんから大人まで、それぞれに合わせて処方をすることができます。
服用のコツは、毎日できるだけ同じタイミングで。空腹時が吸収に良いことはわかっていますが、大切なのは無理なく続けられること。M子の経験からも、医師と相談しながら、自分に合った方法を見つけることが一番大切だと感じています。
次回はチラーヂンを服用する際に気を付けたいことや、副作用について書いていきたいと思います。
誰かの役に立ちますように。
ママ薬剤師M子
【参考文献等】
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