こんにちは、ママ薬剤師M子です。初めての妊娠でよく分からない中、湿疹ができて痒くてたまらないときに、手元に、以前使っていたリンデロンを塗りたくなる衝動に駆られた時がありました。
「(経験則的に)これを塗るとすぐ治りそうだけど、赤ちゃんに影響があるかもしれない」と不安になったことがあります。そのときは産婦人科で別のお薬を出してもらい、やっぱりあの時塗らなくてよかったと思ったことがありました。
今回は、妊娠中や赤ちゃんへのリンデロン使用について、私の経験も交えながらお話ししていきますね。
妊娠中のリンデロン使用、どうしたらいい?
冒頭でもお伝えした通り、薬剤師でも文献や添付文書を読むことと、実際に体験してその立場になったときの違いが身にしみて分かったときでした。
今では二児の母として、子どもたちの湿疹や虫刺されにリンデロンを使うこともありますが、やはり心配になることも。
そして、塗り薬でも「妊娠中にリンデロン(ステロイド)を塗ってお腹の赤ちゃんへの影響が心配…」という声、よく聞きます。
結論から言うと、必要な場合には処方された時に限っては、使用しても大丈夫です!
大事なことは、症状がでているときには、まずは医師(産婦人科、皮膚科)に相談して適切な処置をしてもらうことです。お肌の状態によっては、ステロイドを使わずに肌のスキンケアのみで落ち着くこともあります。診察を受けずに勝手に薬を塗ることはできるだけ避けたいですね。
参考として少し古いですが以下論文に記載があります。アトピー性皮膚炎について抜粋しましたが、アトピー性皮膚炎に限らず妊婦は色々なバランス(ホルモン、ストレス等)が崩れることにより、皮膚に何らかの異常が起こることが多いようです。
- 妊娠によるアトピー性皮膚炎の変化
- 妊娠中のアトピー性皮膚炎経過に関しては必ずしもはっきりしていないが、憎悪する場合が多い。
- ある報告によれば、アトピー性皮膚炎を合併している妊婦の50%以上が妊娠中に皮膚炎が憎悪し、25%は改善している。
- 別の報告でも、61%が憎悪し、4%が改善、35%は普遍。
- 妊娠中のどの時期でもアトピー性皮膚炎は起こりうるが、中期~後期により憎悪する傾向にある。2
妊娠中のステロイド使用による胎児への影響
人に対して治験などを行うことができないので、日本でのクラス分けはない(添付文書による注意)ですが、アメリカなど欧米では「医薬品に関する胎児危険度分類基準」というものがあり、リンデロンに限らずステロイドは「カテゴリーC」で有益性投与(治療上の利益が不利益を上回る場合投与)となっています。
カテゴリーCは「動物実験では、胎仔に催奇形性等があることが証明されているが、ヒトへの比較対照研究は実施されていない。潜在的な利益が胎児への潜在的な危険性よりも大きい場合に利用する」というランクに値します。FDA(アメリカ食品医薬品局)にはカテゴリA~D,Xがあります。3
後ろ向きコホート研究による結論
先ほどのアトピー性皮膚炎についての論文でも引用されていた、「Safety of topical corticosteroids in pregnancy」(妊娠中の安全なステロイド使用について)という論文では、
- 妊娠結果への影響:局所コルチコステロイドの使用は、ほとんどの妊娠結果(分娩方法、先天異常、出生体重、早産、胎児死亡、低Apgarスコア)に影響を与えない。
- 低出生体重:強力な局所コルチコステロイドの使用が低出生体重と関連している可能性が示唆されているが、これは特に大量使用の場合に限られる。
と大量に使用しない場合は、安全に使えることが報告されています。
ただし、これは先ほども挙げたように、直接的に妊娠中の方へのリンデロン等のステロイドの使用後の経過を調査したわけではなく、過去の診察の結果から導き出したもので、詳細についてはよく分かっていないことも多いようです。
「リンデロンを妊娠中に産婦人科で処方されたけど本当にお腹の赤ちゃん大丈夫かな・・」と、使うのをためらわれている方には「指示された通りに使う分には安全なことがわかっていますので、心配しすぎなくて大丈夫ですよ。まずはしっかりとお肌を治して楽になりましょう。お肌の状態やお薬の副作用のことで不安なときには医師や薬剤師が経過をみるので、遠慮せず相談してください。」とお伝えしていました。
繰り返しになりますが、まずはステロイドが必要か必要でないか等、治療の判断が必要になりますので、痒み・赤みなどお肌の辛い症状が続くときには、とくに妊娠期間中はまず医師に診てもらってください。
赤ちゃんへのリンデロン使用、どうしたらいい?
妊娠しているときはお腹の赤ちゃんへの影響が心配ですよね・・・
でも、生まれてきたら生まれてきたで、お薬など、とくに初めてのときは子供に害がないかとても不安になりますよね。M子も薬剤師ですが自分がその環境に置かれると同じ感覚でした。
結論は、必要な場合は積極的に使用されることもある。です。
密封法(ODT=オクルーシブ・ドレッシング・テクニック)とは、傷やアトピーなどをサランラップなどで覆いかぶす方法で肌へのお薬の吸収をよくする方法です。(ただ、おむつは吸収をよくする必要がなくても、必然的になってしまうので注意が必要ということです)
ただし、アトピー性ガイドラインにおいては、こういった記述があります。
「リンデロンを含むステロイド外用薬は年齢に関係なく効果が立証されている」ことが述べられています。必要な場合には、赤ちゃんにもランクの高いステロイドが使用されることもあります(ステロイドのランクや吸収率の記事はコチラ)。
赤ちゃんのお肌はとてもデリケートです。また、大人よりも肌が薄く全体的に大人と比較してお薬は吸収されやすいこと、その中でもとくに顔、腋窩、陰部はお薬が吸収されやすいことにも注意し、指示された部分にのみ塗布するようにしましょう。
おむつで包まれる部分は、とくにステロイドが吸収されやすいことを頭に入れておきたいですね。治したいからといって大量に塗布すると副作用を起こしかねないので指示された量のみ塗布するようにしましょう。また、最近では皮膚の治療はスキンケアと同時に行われることが多く、保湿剤とステロイドのセットで処方されることもあります。
塗布する順番は医師によって様々ですが、M子としては、順番を間違えたとしても、塗り忘れないことが大切だと思っています。育児のどこかのルーチンに塗り薬を塗る時間をうまく取り入れていけると良いですね。
妊娠中の方や赤ちゃんへのステロイドの塗り薬は、場合によっては使用できる!しかし安心安全のため、医師の診察を受け指示に従ってください。不安なときや心配な症状が出たときには遠慮せずに医師・薬剤師に相談を!
妊婦さんの敏感なお肌・赤ちゃんのやわらかいお肌と健康が保たれますように。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ママ薬剤師M子
【参考文献等】- 医療用医薬品 : リンデロン (リンデロン−VG軟膏0.12% 他)[↩][↩]
- 専門医のためのアレルギー学講座 XV.妊娠とアレルギー疾患,アレルギー63(2) 147-154,2014, 寺木 祐一[↩]
- 医薬品使用に関する胎児危険度分類基準の評価と分類[↩]
- 南山堂 薬物治療コンサルテーション 妊娠と授乳 改訂第3版[↩]
- Zugerman,C.et al., Arch.Dermatol., 112, 1326, (1976) »PubMed[↩]
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