こんにちは!ママ薬剤師のM子です。今回は、子どもに使う虫除け(忌避剤)についての選び方と、その中でもよく使われるディートについてお伝えします。

前回までは虫刺されのお薬についてお話ししてきましたが、「そもそも虫に刺されたくないよね!」というのが本音じゃないでしょうか。
「子供にも使えます」と書いてある中から選んではいるものの、「これだ!」という決定打がなく、漠然とした不安を感じたこと、ありませんか?これ、最近のM子です。
今回は、そんなママ・パパさんもいるかな?と思い、虫除け剤の成分や選び方、安全な使い方などについて詳しくお話したいと思います。
子どもの虫除けをテーマにした理由は?
ママ〜、公園行きたい!と子供に言われても、最近は蚊に刺されるの怖いな・・と思っています。というのも、ニュースでもSFTS(マダ二による感染症)が取り上げられることも多く、それ以外でも昔からのデング熱や日本脳炎などは蚊が媒介すると言われています。 (参考1)
単に蚊にさされて痒いだけではすまなくなってきたので、M子が子供の頃の20-30年前とは違った感覚で子供の周りの環境を捉えないといけないなと、ニュースや記事を見ながら痛感しています。
そんな状況で虫刺され後のケアも必要だけど、まずは刺されないように準備することも大事だと思い薬剤師視点でテーマにしてみました。
虫除け剤(忌避剤)ってなに?
虫除け剤は、専門用語で「忌避剤(きひざい)」と言われます。
忌避剤とは、虫を殺すわけではなく、虫が嫌がる成分を使って「あっちに行ってくれ~!」という感じで、虫を寄せ付けなくすることで、私たち人間を刺さないようにするお薬のことです。

少し専門的に言うと、虫は、私たちの体温や汗、呼吸に含まれる二酸化炭素などを感知して寄ってきますが、忌避剤の成分がその感知能力を邪魔してくれます。
子どもの虫除けはどんな虫に効くの?
虫除け剤はたくさんありますが、何が違うのでしょうか。
実は、製品(成分)によって効果のある虫は少しずつ違うんです。 一般的に、パッケージの「効能・効果」のところに記載されている虫は、下に書いたのような感染症を媒介する可能性のある虫たちです(衛生害虫とよばれます)。
虫によって、媒介する感染症の種類にも違いがあるようですね。
- 蚊(カ)・・・マラリア、デング熱などを媒介
- ノミ・・・糞や死骸からペストや腸チフスなどの消化器系の伝染病を媒介
- ダニ・・・日本紅斑熱や重症熱性血小板減少症候群(SFTS )などを媒介
- シラミ・・・日本紅斑熱や重症熱性血小板減少症候群(SFTS )などを媒介
- ハエ・・・糞や死骸からペストや腸チフスなどの消化器系の伝染病を媒介
- ゴキブリ・・・消化器系の伝染病を媒介
引用(参考2)

よく見かける虫ばかりですが、重たい感染症を運んでくることがあると思うと怖くなりますね。小さなお子さんと一緒にアウトドアをするときには、とくにダニの一種であるマダニに注意する必要があります。最近では山やキャンプ場とかだけではなく公園の草むらなど身近にも生息していることがあるようです。マダニにも効果がある虫除け剤を選びたいですね。
子どもの虫除けの成分、どれを選べばいいの?

では、本題はここからで、子どもの虫除け成分は、どれを選べばいいのでしょうか。
ドラッグストアでよく見る虫除け剤の主な成分は、大きく分けて3つあります。それぞれの特徴を知って、シーンに合わせて使い分けるのがお勧めです。
虫除け剤の中で医薬品や医薬部外品として認められているものは、ディートとイカリジンという成分、この2つのみです。
子どもの虫除け成分:①ディート(濃度で医薬品分類が異なる)
「ディート」は、虫除け剤の定番成分で、かなり多くの虫除け剤で使用されています。ただし、どんな人にも使用できるかというとそういうわけでもなく、制限もあります。
ディートの特徴や注意点をまとめてみました。

ディートは汗や蒸発、拭く行為などで持続時間に個人差が出てきますので、成人の場合は持続時間の目安と個人の汗っかきなどの体質の2点を照らし合わせながら適宜塗り直して使用し、小さなお子さんの場合には、年齢の基準と持続時間の目安と体質の3点を照らし合わせながら適宜塗り直すと良いかと思います。
子どもの虫除け成分:② イカリジン
ここ数年で一気に増えてきたのが「イカリジン」という成分が配合された製品です。「イカリジン」は日本名で、海外では「ピカリジン」と呼ばれることもあります。
イカリジンの特徴や注意点をまとめてみました。
子どもの虫除け成分:③天然由来成分
天然成分というと、なんだか体に優しくて安心なイメージがありますよね。
ただし、「天然=誰にでも絶対に安全」というわけではありませんので、少し注意が必要です。
皮膚に使う虫除け剤として、アメリカ合衆国疾病管理予防センター(CDC)が推奨しているもののうち、天然成分としてユーカリ油(レモンユーカリ油)がありますので、ユーカリ油についてご紹介します。
ユーカリ油の特徴

ユーカリ油以外にも、レモングラス、ローズマリー、ゼラニウム、ミントなどの天然成分にも虫よけの効果があるといわれていて多くの虫除け剤をうたった製品が販売されています
しかし、天然成分の虫除け剤は、栽培方法や収穫方法などで品質にバラつきが生じることがあり、効果や安全性などに関してもしっかりと検証されているのかが明らかではない部分もあります。
また、天然の成分とはいえ植物そのものにアレルギーを起こしてしまうこともあるため確実に害がないとも言い切れません。その点を理解した上で、成分表示をしっかりと見て大丈夫と思えるものを選ばれると良いのではないかと思います。(これは、医薬品でも同じです)
【まとめ】子どもの虫除けは成分を知ってシーン別に使い分けよう!
虫除けは、かゆみだけでなく感染症から子どもを守るために大切です。
今回ご紹介した、子どもの虫除けに関する主な成分は「ディート」「イカリジン」「天然由来成分」の3つ。
☑ディート:効果は高いけど、年齢や回数制限に注意が必要です。服にはNG⇒肌に直接塗る。
☑イカリジン:年齢制限がなく、日常使いしやすい。服の上からもOK!
☑天然成分:「天然=絶対安全」ではないことに注意が必要。効果はマイルドなのでこまめな塗り直しもいりますね。
ケース別のパターン
複数種類を持つことは難しいかもしれませんが、みなさんの外あそびがもっと安心して過ごせますように。
子どもの虫除け次回予告!
次回は、虫除け剤を子供に使うときの注意点や、小さいお子さんによく使用されている貼るタイプ、リングタイプの虫除け剤などについての検証をしてみたいと思います。
少し長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
ママ薬剤師M子
【参考文献等】- ファルマシアVol.57No. 5 2021 https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/57/5/57_392/_pdf/-char/ja[↩]
- アクティビティノート第294号 (2021年8月, https://www2.nikkakyo.org/system/files/chumoku294%20.pdf[↩]
- 厚労省 薬食安発第0824003号, https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/06/dl/s0608-5j.pdf[↩]
- ツツガムシはダニの一種です。刺されて感染(ツツガムシ病)し重症化すると、肺炎や脳炎になり死に至ることもある怖い病気です。[↩]
- 福岡県薬剤師会「虫除け剤」ディートの毒性と安全対策, https://www.fpa.or.jp/library/kusuriQA/20.pdf[↩]
- 厚生労働省 ディートを含有する医薬品及び医薬部外品に関する安全対策について, https://www.mhlw.go.jp/topics/2005/08/tp0824-1.html[↩]
- ファルマシアVol. 57 No.5 2021[↩]
- 日経メディカル, https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/373699.html[↩]
- 日本経済新聞, https://www.nikkei.com/nstyle-article/DGXMZO19275000W7A720C1000000/[↩]
- 国立感染症研究所, https://www.niid.jihs.go.jp/assets/img/vir1/div2/repellent.pdf[↩]
- 厚生労働省検疫所FORTH, https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/attention03.html[↩]
コメント